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たった1つ知っているだけで、譲渡税が1,…

たった1つ知っているだけで、譲渡税が1,000万円違う?!取得費がわからないときに試してほしいこと。

たった1つ知っているだけで、譲渡税が1,000万円違う?!取得費がわからないときに試してほしいこと。

不動産を売却するときに、売却の利益にかかる税金を譲渡税といいます。

別の記事( 不動産を売却するとどれくらいの税金がかかるのか?【軽減税率・基礎編】不動産を売却するときの税金は安くなる?【軽減税率と3,000万円控除編】 )でもご説明をしましたが、居住用財産の特例などで控除できれば、譲渡税が課税されない事例も多くあります。

譲渡税の基礎については、基本的な計算方法及び各特例の特徴などを次の記事(不動産売却論)にまとめてあります。ぜひ、ご覧下さい。

売却後では遅い!自宅や実家を売る前に絶対抑えるべき税金を徹底解説

しかし、不動産の取得時期が古く、購入金額がわからない場合や、特例が利用できない相続した不動産の売却などの場合は、譲渡税が高額になりやすいものです。

今回は、譲渡税の基本を踏まえたうえで、市街地価格指数を用いた譲渡税の計算方法をわかりやすく説明していきます。

最後までお読み頂ければ、皆様の譲渡税申告が現在のものよりも、低く抑えられる可能性があることをご理解頂けると思います。

譲渡税の基本

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基本的な計算方法

不動産を売却した場合、売却した利益に対して譲渡税が課税されます。譲渡税は利益に対して20.315%( 長期譲渡所得の場合 )で、不動産自体が高額なことが多いため、数百万単位になることも珍しくありません。

譲渡税の計算式は下記の通りです。

「譲渡益と譲渡税」の計算式
 『譲渡益』= 売却金額 -(取得費+諸経費)
 『譲渡税』= 譲渡益 × 税率

つまり、譲渡益が高くなればなるほど、譲渡税が高くなる計算になります。

例えば、親から相続した土地(保有期間20年以上)を、金5,000万円で売却する場合の譲渡税を計算してみましょう。なお、売却した土地の購入時の資料は一切ないものとし、諸経費は計算しないものとします。

購入時の資料が一切ない場合、不動産会社などは通常、「取得費=売却金額×5%」と説明をします。先ほどの式に当てはめると下記の計算になります。

『譲渡益』= 売却金額5,000万円 - 取得費250万円
     = 譲渡益:4,750万円
※ 取得費=5,000万円×5%

『譲渡税』= 4,750万円 × 20.315% = 約965万円

つまり、控除や諸経費がなければ、取得費以外の95%に譲渡税が課税される計算になります。

取得費とは

先の計算で、譲渡税を減らすための方法は、売却金額を低くするか・諸経費を増やすか・取得費を増やすかです。

取得費を増やす以外は、お手元に残る金額を減らすことになるため、取得費についての考察をしていきます。

まず、国税庁のホームページの記載を確認します。

取得費には、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれます。
なお、建物の取得費は、購入代金又は建築代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。

出典:国税庁

そして、取得費がわからないときの記載は下記の通りです。

譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
取得費は、 土地の場合、買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額です。
建物の場合は、購入代金などの 合計額から減価償却費相当額を差し引いた額です。
しかし、売った土地建物が先祖伝来のものであるとか、 買い入れた時期が古いなどのため取得費がわからない場合には、取得費の額を売った金額の5%相当額とすることができます。

出典:国税庁

この記載をもって、一般的に、取得費がわからない場合は「売却金額の5%」と言われています。ちなみに、これを「概算取得費」といいます。

しかし、よく見ると「取得費の額を売った金額の5%相当額とすることができます」と記載されています。わかりやすく言い換えるとすれば、「金額の5%としても良い」ということとなります。

実は、この概算取得費の計算方法は、強制されているわけでもなく、通達によって適用可能とされているだけなのです。下記に根拠の条文を記載しておきます。

(長期譲渡所得の概算取得費控除)
第31条の4  個人が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、当該収入金額の百分の五に相当する金額とする。

出典:租税特別措置法第31条の4抜粋

合わせて、下記の通達も転載します。

(昭和28年以後に取得した資産についての適用)
措置法第31条の4第1項の規定は、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等の譲渡所得の金額の計算につき適用されるのであるが、昭和28年1月1日以後に取得した土地建物等の取得費についても、同項の規定に準じて計算して差し支えないものとする。

出典:租税特別措置法第31条通達抜粋

つまり、昭和28年以降に取得した資産の取得費計算に、昭和27年12月31日以前の計算方式を準用しても差し支えないと言っているに過ぎません。

言い換えれば、『適正な取得費及び根拠があれば、取得費は売却金額の5%としなくても良い』となります。

では、適正な取得費はどのように算出すればよいでしょうか。

市街地価格指数を利用した譲渡税の計算

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市街地価格指数とは

「市街地価格指数」は、一般財団法人日本不動産研究所が、全国223都市内の調査地点の地価を年2回調査し、指数化するものです。ちなみに、「全国木造建築費指数」は、県庁所在都市(那覇市を除く)の木造建築費を年2回調査し、指数化するものです。

市街地価格指数は、一般財団法人日本不動産研究所のホームページから閲覧できます。なお、詳しくお調べの場合は、刊行物の購入が必要になります。

なぜ、市街地価格指数を利用するか

市街地価格指数から取得費を計算する根拠について、平成12年11月16日国税不服裁判の概略をご説明します。

『平成12年11月16日国税不服裁判』
本件は、土地・建物を売却(譲渡)した個人が、取得費の算定に必要な購入時の売買契約書等の資料を持っていなかった為、預金口座から出金した金額を取得費として申告しています。
しかし、その出金した金額の全てを土地の購入費として計算し、建物価格を算入しなかったために、更正処分を受け、その処分に対して審査請求を行った案件。

土地は、建物と異なり減価償却をしないため、土地の取得費が大きいほど譲渡益が圧縮され、譲渡税が低くなります。

これに対し、国税庁は下記のように回答しています。
※長文のため、太字部分のみお読み頂いても結構です。

『国税庁の主張』

原処分は、次のとおり適法である。

 ■更正処分について

本件物件の取得費について本件物件の取得費については、請求人からその取得に要した費用を明確にする資料の提出はなく、また、原処分の調査によっても実際に要した費用を明らかにできなかったことから、合理的な算定方法によらざるを得ない。

ところで、土地と建物を一括して譲渡し、そのいずれの取得価額も不明である場合の土地・建物の取得費を算定する方法には、① 租税特別措置法第31条の4《長期譲渡所得の概算取得費控除》を適用する方法、② 土地の取得価額は土地の取得時の売買実例から算定し、建物の取得価額は譲渡価額の総額から土地の譲渡時の売買実例価格を差し引いて算出された建物の譲渡価額から減価償却費を控除する方法、③ 土地と建物の固定資産税評価額を基に算定する方法及び、④建物の取得価額を着工建築物構造別単価から算定し、土地については市街地価格指数を基に算定する方法などが考えられる。

しかし、①の方法によれば、本件物件の取得費が一定率で計算され実額等がまったく反映されないこと、②の方法によれば、土地の譲渡及び取得に係る売買実例がなく世情を反映した確実な指標とする合理的理由が見当たらないこと、③の方法によれば、画一的で個別事情が反映されず、実勢価額が形成されないことが考えられるなど、これらの方法を用いて算定することには合理的理由が見当たらない。

そこで、④の方法によれば、取得費の算定の基になる建築物単価が一般財団法人日本不動産研究所が公表した統計的な数値であることから、市場価格を反映したより近似値の取得費が計算できることになり、合理的であると言える。

出典:国税不服裁判所HP

上記抜粋の後に、国税庁は④の方法(=市街地価格指数を利用した計算方法)で税額を計算しています。

これに対し、裁判所は下記のように判断を行います。(一部抜粋)

『裁判所の判断』

■本件物件の取得費について

本件物件の取得費の算定に当たっては、本件建物のうち改築として明らかにその額が認定できるものについてはそれによることとする。

しかしながら、取得時期は判明しているが取得価額を直接証する契約書等の資料の提出がなく、その額が不明なものについては、その費用を実額により算定することができないから、その部分については、推計の方法によって算定せざるをえない。

そして、このような場合の土地・建物の取得費については、原処分庁(国税庁)主張のとおり、各種の計算方法が考えられるところ、原処分庁が採用した計算方法は、本件新建物の取得費については、一般財団法人日本不動産研究所が公表している統計的な数値である建築物単価を基に建築価格を算定し、その価額から譲渡時までの減価償却費相当額を控除しているものであり、実勢価額の近似値と認められる時価相当額を推定していること、また、本件宅地の取得費については、本件物件の譲渡価額の総額から実勢価額の近似値と認められる当該建物の取得費を差し引いた額に、一般財団法人日本不動産研究所が調査し公表している六大都市を除く市街地価格指数(住宅地)の譲渡時に対する取得時の当該価格指数の割合を乗じて時価相当額を推定していることから、いずれも合理性があり、当審判所においても、これを不相当とする理由は認められない。

出典:国税不服裁判所HP

 

わかりやすく簡易的な説明を行うとすれば、国税庁は本件に対して「概算取得費(売却価格の5%)の計算では実態に沿わないため、市街地価格指数を利用した税額が合理的である」とし、裁判所が国税庁の主張を認めたことになります。

以上が市街地価格指数を取得費の計算に利用する根拠となります。

市街地価格指数を利用した譲渡税計算

実際に市街地価格指数を利用して譲渡税を計算していきます。なお、指数は平成12年3月を基準=「100」とし、毎年3月と9月に発表されるものです。昭和30年3月の指数から存在するため、幅広く利用できます。

『譲渡税計算式』

譲渡(売却)金額× 取得時の指数 / 譲渡時の指数

※ 分子  /  分母

例題を用いて、「概算取得費を利用した譲渡税」と「市街地価格指数を利用した譲渡税」を比較していきます。

■例 題
・種  別:土地
・場  所:世田谷区(東京23区)
・譲渡金額:金8,000万円
・取得時期:昭和54年3月
・譲渡時期:平成24年9月

※わかりやすくする為、仲介手数料等は考えないものとします。

概算取得費を利用した場合
取得費 = 8,000万円 × 5% = 400万円
譲渡益 = 8,000万円- 400万円 = 7,600万円
譲渡税 = 7,600万円 × 20.315% = 1,543.94万円

譲渡税は、「約1,543万円」になります。 

次に、同じ条件で市街地価格指数を利用します。

市街地価格指数を利用した場合
取得費 = 8,000万円 × 51.5 / 75.5
    = 約5,456万円

※分子に昭和54年3月の指数、分母に平成24年9月の指数

譲渡益 = 8,000万円- 5,456万円 = 2,544万円
譲渡税=  2,544万円 × 20.315%  = 516.81万円

譲渡税は、「約516万円」になります。

市街地価格指数を利用できれば、譲渡税に金1,000万円以上の差がでることになります。

別の方法としては、指数は平成12年3月を基準としていることから、譲渡(売却)した不動産周辺の平成12年当時の公示地価に指数を乗じ、算出しても良いかもしれません。

市街地価格指数の注意点(必ずお読み下さい)

市街地価格指数を利用した譲渡税の計算は、前述のように裁判で認められた経緯があるものの、必ず利用できるものではありません。

適正な課税がなされていないと税務署に判断された場合は、ペナルティを受ける可能性もあるため、当分野に詳しい税理士・専門家に事前に相談することを強くお奨め致します。

合わせて、概算取得費の計算方法は間違ったものではなく、税務申告においても有効です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。市街地価格指数は、取得費の計算のため、もちろん「居住用財産の3,000万円控除」と併用できます。

売主様にとって有利な選択をし、少しでもお手元に残るご利益が最大額に近づくことを願っております。

不動産の売却において、市街地価格指数を用いた譲渡税の計算は売却前からはじめることをお勧め致します。申告時期になってからの対策では、間に合わないことも多いため、早めのご相談をお願い致します。

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今回も最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。

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この記事を書いた人

山﨑 紘靖
山﨑 紘靖
過去に200件以上の不動産売却に携わり、 某大手不動産会社で営業成績No,1だった山崎が、 売却の専門家として、あなたの「最高額で売れた」をサポートします。

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