BLOG

知らないと何百万円も損をする?!海外居住…

知らないと何百万円も損をする?!海外居住者が日本の不動産を売却するときの税金について、税理士に聞いてみた。【非居住者・不動産売却】

知らないと何百万円も損をする?!海外居住者が日本の不動産を売却するときの税金について、税理士に聞いてみた。【非居住者・不動産売却】

こんにちは。売却コンシェルジュの山﨑です。

今回は、海外居住者(非居住者)の日本国内にある不動産売却についてです。

グローバル化が進む現代において、お仕事などの理由で海外に居住する日本人の方も増加しております。

では、日本にいる間に購入した不動産や、相続で取得した日本の不動産を、海外に居住している間に売却する場合、どのような税金が売主に課税されるのでしょうか。

今回は、税金のプロである税理士に質問したいと思います。

税金のプロ、税理士に聞いてみた

IMG_4586

-人物紹介-

中田哲也  1970年10月東京生まれ 

東京会計総合事務所/中田哲也税理士事務所 所長

経営学修士(成蹊大学)。東京会計総合事務所で税理士補助を行う中で中小企業に対する税務・会計、経営、労務に関するコンサルティングの経験を積む。その後、同事務所内で中田哲也税理士事務所開業。現在に至る。

ベンチャー支援を行ないながら、多くのベンチャー企業に出資、又、経営にも参画する。IT関係、不動産関係、人材関係、教育関係、飲食関係、スポーツ関係、医療関係等の会社の幅広い支援を行っている。

2004年よりドリームゲートにてアドバイザーとして税務・会計、ビジネスプラン、会社設立の相談を中心に日夜回答に励む。初心者にも分かり易い解説に心がけ、これまでの相談件数は2000件を超える。
2007年 東海大学短期大学部 非常勤講師
2008年 経済産業省・中小企業庁 「中小企業税制委員会 委員」
2008年 経済産業省・中小企業庁 「租税特別措置効果検証委員会 委員」・日本税務会計学会会員 ・ 税務会計研究学会会員
2014年6月 早稲田大学エクステンションセンター講師 
2014年12月 2013年度 ドリームゲートアドバイザーグランプリ(税務・会計)第1位
2016年1月  中野区ビジネスプランコンテスト審査員  等

山 﨑:中田先生、本日はよろしくお願いします。

税理士中田先生(以下、「中田」):こんにちは。税理士の中田です。よろしくお願いします。

山 﨑:さっそくですが、最近、売却コンシェルジュからお問合せ頂くお客様の中で、海外に居住しながら、日本国内の不動産の売却を行いたいという要望が増えています。

中 田:山﨑さんのおっしゃるように海外に居ながら、日本の不動産を売却される方も多くなってきましたね。それだけ、日本もグローバル化してきたという事でしょうか!

山 﨑:たしかに、企業も積極的に海外進出している時代ですから、特別なことではないのかもしれません。

ただ、日本に居住しながら不動産を売却した場合に課税される譲渡税(所得税+住民税)や源泉所得税などは、海外居住者の場合どのような扱いになるのか不透明な方も多いように思います。

中 田:そうですね!今日は、海外に居住しながら、日本の不動産を売却した場合、税金はどうなるのかという問題についてお話をしますね!

税金と聞くと頭が痛い方も多いと思いますので(笑)

居住者・非居住者とは?

IMG_4616

山 﨑:海外で居住している方のことを「非居住者」といいますが、「非居住者」とは税法上どのような状態の方をいうのでしょうか?

中 田:「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。

居住者(非永住者を除く)は、所得が生じた場所が国内か国外かを問わず日本で課税されるのに対し、非居住者は日本国内において生じた所得に対してのみ課税されるという違いがあります。

(ちなみに、「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。また、「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。)

山 﨑:つまり、居住者でない人が非居住者という事ですね。

中 田:そういう事なんです。国内に1年以上住所や居所を現在まで引き続き持たない方は、非居住者という事になりますね。居住者か非居住者の区分にはその人の国籍は一切関係なく、外国人の居住者もいれば日本人の居住者もいるわけです。

山 﨑:なるほど。日本の方でも1年以上の期間で海外に赴任されている方は非居住者になるという訳ですね。

中 田:はい、そういう事になります。契約等で在留期間があらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除き「継続して1年以上居住するもの」として扱われます。
よって、3年という辞令で転勤する場合は、非居住者になるという訳です。

参照:居住者・非居住者の判定(国税庁)

源泉徴収について

山 﨑:非居住者は日本で生じた所得にのみ課税されるという事ですが、もし非居住者が日本国内の不動産を売却した場合、日本で所得が発生するわけですから、源泉所得税を支払う義務があるということですね?

IMG_4581

中 田:そうなんです。非居住者の申告漏れを防ぐという観点からも、国内で非居住者から不動産を購入した買主は、その売買代金の10.21%を源泉徴収して、翌月10日までに買主が所轄の税務署へ納付しなくてはいけません。

ただし、買主が個人(法人ではない)で、土地建物等の売却代金が1億円以下、その土地建物等がその個人の自己又はその親族の居住の用に供する場合である場合は、源泉徴収する必要がありません。(※詳細は、後述します。)

山 﨑:買主が行うという点がポイントですね。法人が事業用で購入した場合、源泉徴収税額を納税するように私もお伝えしています。

中 田:さすがですね!

山 﨑:ただ、そのままでは、売主は源泉所得税を引かれたままになってしまいます。

IMG_4612

中 田:非居住者も居住者と同様に収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いた金額に課税されることになります。

山 﨑:それは良かったです。源泉所得税は売買代金の10.21%と割高ですからね。

居住用財産の3,000万円控除などの特例について

山 﨑:ちなみに、居住用財産の3000万円控除の特例なども非居住者には適用されるのでしょうか?

IMG_4595

中 田:はい、使えます。

居住者が国内の不動産売却をする場合と同様で、売却した土地・建物等が売主の居住用で、その居住用の土地・建物等に住まなくなった日から3年目の年末までに売却していれば、譲渡所得の金額から最大3000万円を控除することができます。

山 﨑:では、マイホームを売った場合の軽減税率も同様に利用できますか?

IMG_4568

中 田:はい。利用できます。

さらに、売却した年の1月1日において、その居住用不動産の所有期間が10年を超えていれば、譲渡所得の金額から3,000万円を控除した後の金額が6,000万円を超えるまでの金額については、所得税が15.315%から10.21%へ軽減されます。

参照:マイホームを売った時の軽減税率の特例(国税庁)

 

山 﨑:非居住者でありながら、特例を利用できるのであれば、適用可能な期間内に不動産売却をするか・しないかによって、売主のお手元に残る金額が大きく変わりますね。

 

中 田:そうですね。上記特例を使って確定申告をして、源泉徴収分が多く取られている場合、その分は、税務署より還付されることとなります。

住民税について

山 﨑:非居住者ということは、日本の住民ではない状態ですが、譲渡税は、所得税+住民税(+復興税)で課税されています。住民税分はどうなりますか?

 

中 田:住民税は、譲渡した年の1月1日において日本国内に住所がない場合には原則的に住民税は課税されません。ただし、国内に事務所・事業所、又は家屋敷(住所地以外の場所に設けられたいつでも自由に住めることができる住宅)を有する場合には、所得の金額に関係なく一定の金額(均等割)が課されます。

確定申告について

山 﨑:先程から、何度かお話にでている確定申告ですが、海外にいる場合は自分ではできませんが、どうしたらいいのですか?

中 田:居住者が海外勤務など1 年以上日本を離れる場合において、その年分以後に確定申告書を提出しなければならないときは、納税管理人を定める必要があります。

納税管理人とは、確定申告書の提出や税金の納付等を非居住者に代わって行う人のことです。納税管理人を定めたときは、非居住者の納税地(原則として非居住者が住所としていた場所)を所轄する 税務署長に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を出国する日までに、提出する必要があります。提出後に税務署が発送する書類は納税管理人宛てに送付されます。

なお、納税管理人は親族など誰でもなることができます。

山 﨑:国内に不動産などの資産がある場合は、出国前に納税管理人を提出しておくほうが良さそうですね。

事例の相談

山 﨑:では、最近受けた案件なのですが、具体的に相談をしてもいいですか?

IMG_4589

中 田:はい!どうぞ。

山 﨑:転勤でアメリカに勤務されている日本の方からメールで相談があったのですが、内容としては下記のような状況です。

 

 【 相談例 】

 「マンション取得価額」 8,000万円

 「償却後売却時簿価」     6,000万円

 「マンション売却価額」 7,000万円

・自己居住用として、5年間所有
・売主はアメリカへ海外転勤した後、3年以内に自宅売却
・買主は「会社事業用」として、マンションを使用するために購入

 

中 田:これは居住用で使っていましたが、買主が事業用のため源泉徴収をするケースですね。

非居住者に対する不動産譲渡は、原則として譲渡対価の10.21%を買主が源泉徴収しなければなりません。

 
※ただし、例外として次の2つの条件を”同時に”満たす場合には源泉徴収の義務はありません。

源泉徴収を行わなくてよい条件

1)譲渡対価が1億円以下であること
※譲渡対価は土地・建物等の全体の金額で判定
※非居住者等が受け取る金額で判断

2)買主が自己居住又は買主の親族の居住のために購入すること

 

相談の事例の場合、譲渡の相手方である買主はマンションを自己居住や親族の居住のために使用せず、事業用として使用することになっていますので、譲渡対価が1億円以下という条件は満たしますが、自己居住等の条件を満たしていません。

したがって、買主は売主に対して譲渡対価を支払う際に、譲渡対価である7,000万円の10.21%である714.7万円を源泉徴収して(差し引いて)支払う必要があります。

なお、源泉徴収した714.7万円は買主の居住地を所轄する税務署に対し、譲渡対価を支払った日の属する月の翌月10日までに、直接税務署又は最寄の金融機関で納付することになります。

納付が遅れた場合には、不納付加算税10%及び延滞税が課されますので注意が必要です。

次に、この例では売却価額7,000万円と簿価6,000万円の差額である1,000万円について譲渡所得が生じています。

この1,000万円の譲渡所得に「居住用財産の3,000万円特別控除」を適用できます。

したがって、3,000万円特別控除を適用した後の譲渡所得は0円となり、源泉徴収された714.7万円は、非居住者が翌年の3月15日までに確定申告を行うことで還付されることになります。

納税地(原則として非居住者が住所としていた場所)を所轄する 税務署長に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を出国する日まで提出するのを忘れないようにしましょう。

 

山 﨑:ありがとうございます。よくわかりました!早速、質問者へ回答し、申告漏れがないように伝えます。申告しないと多大な損をしますからね。

中 田:そうですね。忘れずに申告をするように教えてあげてください。

山 﨑:今日は、ありがとうございました。

中 田:また、いつでも相談してくださいね!

IMG_4615

山 﨑:実は、相続空家の3,000万円控除についても、少し込み入った相談があるのですが・・・。(後日公開します。)

まとめ

IMG_4479

今回は、非居住者の日本国内の不動産売却について記載しましたが、いかがでしたでしょうか。

非居住者の不動産売却については、税金だけでなく、所有権移転登記なども複雑な手続きが必要となります。

別の記事にて、所有権移転登記についても記載しますが、もし、あなたが非居住者で、日本国内の不動産の売却をお考えの際は、取引に精通している専門家にご相談することをお勧め致します。

今回、解説頂いた税理士中田哲也先生へのご相談は、売却コンシェルジュでも承りますので、お気軽にご相談下さい。

最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。少しでもお役に立てれば幸いです。

成功事例

この記事を書いた人

山﨑 紘靖
山﨑 紘靖
過去に200件以上の不動産売却に携わり、 某大手不動産会社で営業成績No,1だった山崎が、 売却の専門家として、あなたの「最高額で売れた」をサポートします。

お問合せから第二の人生が始まります。
相談は無料です。ご依頼お待ちしています。

  • お電話でのお問い合わせ
    03-6450-7073
  • FAXでのお問い合わせ
    03-6450-7138

関連記事