『あなたの期限は今年かも?!』空き家相続に係る3,000万円特別控除の特例
記事をお読み頂いている方の中には、相続した実家を空き家のままにしている方もいらっしゃると思います。
総務省の調査によると全国の空き家は2013年10月時点で820万戸で、空き家率(住宅全体に占める空き家の割合)は13.5%と過去最高です。
この増え続ける空き家対策の一環として、『相続空き家に係る3,000万円特別控除の特例』が平成28年4月1日から施行されます(予定)。
さて、今までは【質問】介護施設に入居した後の住宅売却についてなどの記事で、相続発生前に対処を行えば、居住用財産の3,000万円控除を利用できるとご説明してきました。
では、今回の特例は売主様にどのような影響をあたえるのでしょうか。
施行前と施行後で、なにが変わるのか?どのように利用すれば売主様にとって有効なのか?をわかりやすく説明していきます。
最後までお読み頂き、相続した空き家を保有している方のお役に立てれば幸いです。
※記事記載の『相続空き家に係る3,000万円特別控除の特例』は、平成28年4月より施行となりました。詳細につきましてはお気軽にお問い合わせください。
1.相続空き家に係る3,000万円特別控除の特例の基本
1-1.新設された特例の利点
今までの税制ですと、相続した不動産を売却した場合、相続人が居住をしていなければ、売却した利益に対して20.315%( 長期譲渡所得の場合 )の譲渡税が加算されてきました。
今回の特例が新設されると、売却の利益(譲渡益)のうち、3,000万円が非課税となり、最大で約609万円の譲渡税負担を軽減することが出来ます。
平成27年5月に施行された「空き家特別措置法」と合わせて考えると、行政側としては『空き家を放置し保有し続ける場合は、固定資産税課税額を上げ、空き家を譲渡(売却)する場合には、譲渡税を優遇する。』というアメとムチを用意した形になります。
では、どのような場合に『相続空き家に係る3,000万円特別控除の特例』が適用されるのでしょうか。
1-2.主な適用要件
まずは、平成27年12月24日に閣議決定された「平成28年税制改革の大綱」の内容をわかりやすくしてご説明致します。
『特例の適用基準』
①相続開始直前まで自宅として使用されており、お亡くなりになった人以外に、住んでいる人がいない。②相続の時から、事業・貸付・居住をしていないこと。
③平成28年4月1日から平成31年12月31日までの売却(譲渡)であり、相続開始後、3年を経過する日の属する12月31日までの譲渡である。
④譲渡対価が、金1億円以下。
⑤昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)。
⑥土地での譲渡:建物を除去(解体)する。(更地)
⑦建物+敷地の譲渡:建物が耐震基準を満たしている。(リフォーム)
ひとつひとつ、ご説明します。
①・② :お亡くなりになる直前まで、お一人で自宅として利用していた家屋が対象になります。また、お亡くなりになってから(つまり、空き家になってから)、譲渡(売却)のときまで「誰も住んでいないこと」「人に貸していないこと」が適用要件になります。
③:特例の期限は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの譲渡(売却)です。
たとえば、平成25年2月2日に相続が発生した場合は、平成28年12月31日までの譲渡であれば適用されます。
④:売却価格が、金1億円までの適用となります。
⑤:旧耐震基準で建築された一戸建が対象となります。マンションなどの区分所有建物は適用除外です。
⑥・⑦:「戸建」としての売却の場合は、現在の耐震基準に合うリフォームが必要になり、「土地」として売却する場合は、建物を解体し『更地』とすることが、特例の適用要件となります。
2.具体例からの譲渡税の算出
前述の説明で『相続空き家に係る3,000万円特別控除の特例』の概要はご理解いただけたかと思います。
では、例題を使い実際の計算方法をご説明致します。
『例 題』
・東京都世田谷区代沢2丁目(最寄駅「下北沢」)
・土地:100㎡ (30.25坪)
・築年数:昭和43年築
・相続発生直前まで、自宅として使用
・現況:空き家
・売却金額:金7,500万円
・▲仲介手数料:金249万円
・▲測量代:金50万円
・▲解体費用:金250万円
なお、説明をわかりやすくする為、その他諸経費は割愛します。
今回は、解体して更地としての売却をする仮定とします。
2-1.譲渡税の計算
例題に沿って、特例を利用した場合の譲渡税を計算します。
※譲渡税の計算詳細は、不動産を売却するとどれくらいの税金がかかるのか?【軽減税率・基礎編】を参照。
『譲渡益』= 売却金額 -(取得費+諸経費)
7,500万円-{375万円+(249万円+50万円+250万円)}
=7,500万円-924万円
=譲渡益:金6,576万円 ※取得費は、売却金額×5%
次に、特例の3,000万円を引きます。
6,576万円-3,000万円=3,576万円
最後に、長期保有の譲渡税率を乗じます。
3,576万円×20.315%=譲渡税:約金726万円
最後に実際にお手元に残る金額を算出します。
7,500万円-(249万円+50万円+250万円+726万円)
=実際の残額:金6,225万円
2-2.特例を利用できない場合との比較
特例を利用できない場合との比較を行います。
前述の3,000万円を引く前の金額に、譲渡税率を乗じます。
6,576万円×20.315%=譲渡税:約金1,335万円
お手元に残る金額を計算します。
7,500万円-(249万円+50万円+250万円+1,335万円)
=実際の残額:金5,616万円
特例を利用した場合は、金6,225万円のため、約金609万円の違いが生じます。
2-3.生前に売却した場合
例題とは少しずれますが、たとえば、親御様が高齢になり、子どもとの同居する場合や不動産を売却して介護施設に移る場合は、さらに税額が更に抑えられる可能性があります。
※詳細説明は、不動産を売却すときの税金は安くなる?【軽減税率と3,000万円控除編】を参照。
居住用の自宅を売却する場合は、居住用財産の3,000万円控除を利用できます。
あわせて、10年を超える自宅の売却の場合、6,000万円譲渡税は14.21%です。
つまり、譲渡税の計算は下記の通りになります。
3,576万円×14.21%=譲渡税:約金508万円
お手元に残る金額は、
7,500万円-(249万円+50万円+250万円+508万円)
=実際の残額:金6,443万円
特例を利用できない場合との金額の差は、金826万円です。
3.まとめ
『相続空き家に係る3,000万円特別控除の特例』についてご理解いただけたでしょうか。
相続を受ける不動産は、思い入れもある大切なものです。
大切なものだからこそ、ご事情で売却する場合は、少しでも有利に譲渡したいとの思いも強いと思います。
今回の例題では、売却金額は同じであっても、最大826万円の差が出ました。
売却時期や特例を有効活用してご利益の最大化を図って頂ければと思います。
ちなみに、平成28年4月に特例が予定通り施行された場合、平成25年に相続が発生した方は、今年が特例適用の期限となります。
空き家のまま保有している実家について、ご家族で話し合ってみる機会かもしれません。
今回も最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。
※相続空き家の3,000万円控除の応用編は、『1億1,000万円より、1億円で空き家を売るほうが得をする?!相続空き家の3,000万円控除を理解しよう。』をご参照ください。
※記事記載の『相続空き家に係る3,000万円特別控除の特例』は、平成28年4月より施行となりました。詳細につきましてはお気軽にお問い合わせください。
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この記事を書いた人
- 山﨑 紘靖
- 過去に200件以上の不動産売却に携わり、 某大手不動産会社で営業成績No,1だった山崎が、 売却の専門家として、あなたの「最高額で売れた」をサポートします。
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