【東京・神奈川・埼玉】郊外ベッドタウンの不動産が売れなくなる日

こんにちは、売却コンシェルジュの山崎です。いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は、「郊外ベッドタウンの不動産(家)が売れなくなる日」をテーマに、皆さんの大切な資産である不動産の売却について、具体的なアドバイスをお届けしたいと思います。
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郊外ベッドタウンの不動産、今が一番高く売れる理由
結論から申し上げると、郊外ベッドタウンの不動産売却は、少しでも早い方が有利です。そして、おそらく今が一番高く売れる時期だと思っています。
ここで言う「ベッドタウン」とは、バブル期に開発された、都心までドアツードアで1時間から1時間半程度の通勤時間を要するエリアに建てられた戸建て群、いわゆる「団地」と呼ばれるような地域を指します。具体的には、東京都町田市や日野市、神奈川県の相模原市、埼玉県ではさいたま市岩槻区・見沼区、川越市、さらには坂戸市や鶴ヶ島市といった、国道16号線周辺からその先のエリアにお住まいの方や、そういった地域にご実家を所有されている方を想定しています。
こうした地域に戸建てをお持ちの方、あるいはご実家を相続して空き家になっている方で、売却、賃貸、あるいは今後の維持管理について悩まれている方は、ぜひこの先をお読みください。
なぜ今が売り時なのか? 日本の人口減少と不動産市場の未来
具体的なお話の前に、不動産を売却する際に、その買主は誰かということを想像してみてください。郊外のベッドタウンは土地区画形状も、都市計画も「マイホームを建築して、居住する」ことが前提になっています。つまり、ベッドタウンの買い手は「世帯を持ち、住むための家を求める」層に限られます。この前提に立つと、単純に買い手となる「世帯数」や「人口」が減れば、ベッドタウンの不動産は売れにくくなる、というシンプルな構図が見えてきます。
では、日本の人口は今後どうなっていくのでしょうか。
深刻化する人口減少と少子高齢化
2020年の日本の総人口は1億2,615万人でしたが、これから日本は長期的な人口減少期に入ります。この流れは今後も続きます。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2056年には総人口が1億人を割り込み、9,956万人になると予測されています。さらに2070年には8,700万人程度にまで減少する見込みです。
人口が減るということは、不動産の買い手となる「需要者」そのものが減ることを意味します。
加えて、少子高齢化も深刻です。2020年時点で65歳以上の人口は3,600万人(全体の約28%)でしたが、2050年には3,880万人(全体の約37%)に達すると予測されています。ご存知の通り、65歳以上の高齢者が自宅用に不動産を購入するケースは少ないため、不動産を購入する主要な層(30代後半から40代の子育て世帯)の割合が相対的に減少していきます。
こうした人口減少、少子高齢化、そして未婚化・晩婚化の進展は、郊外ベッドタウンの中古戸建て、あるいは新築用地の需要を確実に減少させていくでしょう。
不動産価値の三極化:歴然とした地域格差
しかし、日本の人口減少は全国一律に起こるわけではありません。すでに過疎化が進む地域では、対策を講じても若い世代の流出は続き、人口減少と少子高齢化がさらに加速していくでしょう。一方で、通勤や居住に適した都心部や都市部には、これからも人口が流入し、世帯数も増加すると見込まれています。
このように、人口減少と少子高齢化が進む地域と、人口流入と世帯増加が進む地域では、不動産価値に歴然とした格差が生まれていきます。こうした状況から、今後の不動産市場は地域の特性によって次のような「三極化」が進むと考えられます。
人が集まる地域(全体の約15%)
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- 東京都心部のようなタワーマンションが次々と建ち、抽選になるほどの人気物件が多数存在するエリア。
- 世田谷区や杉並区など、人口が緩やかに増加または維持されている地域。
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これらの地域では、不動産価格が維持されるか、都心部では上昇し続ける傾向にあります。
徐々に減少していく地域(全体の約70%)
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- 今回お話している郊外のベッドタウンがこれに該当します。
- 人口が徐々に減少し、高齢化が進む地域です。
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不動産価値は時間とともに下落していく傾向にあります。まだ売却は可能ですが、急がなければ無価値化、あるいはマイナス価値に向かっていく可能性があります。
無人化する地域(全体の約15%)
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- すでに不動産価値が無価値化、あるいはマイナス価値となっている地域。
地域による不動産価値の差:具体的なデータから見る現実
地域による不動産格差は、日々の暮らしの中で実感しにくいものです。たとえ地域密着型の不動産会社であっても、限られたエリアでの取引だけでは、その全体像を把握しにくいかもしれません。
私自身も、都心部(弊社下北沢店周辺)の取引では、物件情報公開後すぐに多くの問い合わせをいただくことが多く、人口減少による需要の減少を肌で感じにくい部分がありました。
しかし、弊社川越店(埼玉県川越市)の周辺地域では、都心部に比べて不動産需要が少ないことを痛感しています。実際に、川越市で取り扱う物件は(場所にもよりますが)、多くの地域で3〜4年前までは、需要が少ないながらも価格を多少下げれば売れていました。しかし、ここ最近は物件の動きが止まり、1段どころか2段、3段と大幅に値下げしないと、問い合わせすら来ない状況です。
こうした都心部と郊外ベッドタウンの需要格差は、すでに述べた人口・世帯数の減少が主な原因です。国立社会保障・人口問題研究所の「都道府県・市区町村別将来推計人口」データを見ると、将来的な人口の地域差が明確に現れています。
地域名 | 2020年総人口(指数100とした場合) | 2050年総人口(指数) | 人口増減率 |
杉並区 | 100 | 104.7 | +4.7% |
渋谷区 | 100 | 109.6 | +9.6% |
世田谷区 | 100 | 104.6 | +4.6% |
浦和区 | 100 | 106.0 | +6.0% |
大宮区 | 100 | 106.4 | +6.4% |
川越市 | 100 | 93.0 | -7.0% |
坂戸市 | 100 | 83.0 | -17.0% |
鶴ヶ島市 | 100 | 83.0 | -17.0% |
(出典:国立社会保障・人口問題研究所「都道府県・市区町村別将来推計人口」より筆者作成)
都心やさいたま市の一部(浦和区・大宮区)では人口が増加または維持される一方、川越市では7%減、坂戸市や鶴ヶ島市では17%もの人口減少が見込まれています。坂戸市や鶴ヶ島市のような地域で17%の人口減少は、約1万人から1万5千人もの人口が減ることを意味します。
これらの人口が減少する地域には、バブル期に一斉に分譲された「団地」と呼ばれる戸建て群(いわゆる、ベッドタウン)が多数存在します。これらの団地に存在する多くの自治会(町内会)では、現在の平均年齢層が約75歳から80歳です。平均寿命を考えると、今後20年で一気に空き家が増加する可能性が高いでしょう。実家が空き家化すれば、その家族や相続人は、実家を売却するか、賃貸に出すか、管理を続けるか、いずれかの選択を迫られます。
自然災害と不動産価値への影響
さらに、近年激甚化する自然災害も不動産価値に影響を与えています。ゲリラ豪雨による土砂災害や鉄砲水、地震による液状化、津波のリスクなど、災害に対する買い主側の意識が顕著に高まっています。
特に、土砂災害特別警戒区域内では、住宅ローンが組めなくなったり、団体信用生命保険に入れなくなったりするケースも現実的に起こっています。ハザードマップに指定された地域では、都心部であっても郊外であっても、不動産価格が加速度的に下落する傾向が見られます。
まとめると、人口減少、少子高齢化、そして自然災害の激甚化が進むにつれて、不動産価値の地域格差はより鮮明になり、下落する地域の不動産価格は下がっていく可能性が高いと言えるでしょう。
あなたの不動産はどちら? 価格維持・上昇地域と下落地域の判別方法
「自分の持っている不動産が、今後どうなるのか?」これは皆さんが最も気になるところだと思います。
不動産価値の増減は地域によって異なり、同じ市区町村内でも細かなエリアによって違いが出ることがあります。
正確な判断は不動産会社に査定を依頼するのが最も確実で手軽な方法です。無料で査定を依頼できるので、売却を検討中の方はぜひ活用してみてください。
ここでは、私が見出した、価格維持・上昇地域と下落地域の判別におけるざっくりとした指標をご紹介します。
価格維持・上昇地域の指標(上位15%の地域)
路線価 < 公示地価 < 実勢価格
路線価は、相続税評価額の算出基準となる土地の平米単価で、全ての公道に設定されています。公示地価は、国土交通省が年に1回発表する、その地域の不動産取引の指標となる平米単価です。これらはインターネットで簡単に調べられます。実勢価格は、実際に取引されている価格のことで、SUUMOやHOME’Sなどのポータルサイトで売りに出されている物件の平米単価を参考にすることができます。
価格維持・上昇地域では、路線価よりも公示地価が高く、さらに実勢価格が路線価の1.6倍〜2倍程度と、高い水準で取引されています。
徐々に価格が下落している地域の指標(全体の約70%の地域)
路線価 < 公示地価 ≧ 実勢価格
下落が進む地域では、実勢価格が公示地価を超えられず、路線価に近い価格で取引されるケースも出てきています。路線価や公示地価は年に1回の発表であるため、実勢価格が下がり続けると、翌年には路線価や公示地価もそれに追随して下落します。結果的に、これらの指標も実勢価格も、その地域では下がり続ける傾向が見られます。
もし、ご自身の不動産がどちらのタイプに属するか判断が難しい場合は、私にご連絡いただければ、その地域の土地の取引実勢価格をお伝えできます。お気軽にご相談ください。
下落地域での不動産売却戦略:今すぐ始めるべきこと
郊外のベッドタウンの不動産は、ほとんどが「徐々に下落する地域」に該当します。この「徐々に」のスピードは地域によって異なりますが、下落傾向にあることは間違いありません。だからこそ、売却を考えるのであれば、今が一番良い時期だと私は考えています。経済的な合理性で考えれば、人口減少や世帯数の減少とともに、その地域の不動産価格が下がるのは避けられない運命だからです。
では、下落傾向にある地域で不動産を売却する場合、どのように進めれば良いのでしょうか。
1. 適切な価格設定で早期売却を目指す
最も重要なのは価格設定です。地域の売れている相場に「ドンピシャ」で合わせるか、下落が早い地域であれば、相場よりもさらに下げて売りに出すことを検討しましょう。
現在売りに出されている競合物件も売れていない状況であれば、それよりもさらに低い価格で売りに出すしかありません。相場はどんどん下落していくため、競合があるうちに、その競合よりも魅力的な価格で売りに出し、少ない需要を喚起することが重要になります。
なぜここまで思い切った価格設定が必要なのか、ここで買い主側の立場や状況から考えてみましょう。
不動産の主な買い手となる層は、30代後半から40代の子育て世帯です。この層は夫婦共働きが多く、タイムパフォーマンス(タイパ)を非常に重視します。そのため、彼らの需要は駅近のマンションなどに集中しがちです。駅から遠い、あるいはバス便が必要な郊外の戸建て団地群は、そもそもの需要が小さくなっているのが現状です。
さらに、これらのベッドタウンの建物は分譲された時期を考えると築年数が古く(築30〜40年程度)、買い主が解体して新築するケースがほとんどです。しかし、コロナ禍以降、建築費は高騰し続けています。加えて、新築建物には省エネ基準への適合が厳格に求められ、適合しないと住宅ローン控除が受けられない状況です。一方で、建物の価格が上がっているにもかかわらず、購入者層の所得は上がっていません。所得が上がらなければ、買い主が組める住宅ローンの総額は変わらないため、建物価格が上昇した分、土地の価格を下げるしかなくなってしまうのです。
このような市場と需要者層の状況を考えると、最初から買い手に響くような価格設定をすることが非常に重要だと言えます。
2. 都内近郊であれば、半年以内での成約を目指す
都内近郊(東京・神奈川・埼玉・千葉)のベッドタウンにおける不動産売却は、3ヶ月での成約は難しいかもしれませんが、半年以内での成約を目指しましょう。しかし、下落地域では、新築戸建てでさえ1年経ってようやく売れる、あるいは1,000万円近く値下げしても売れないといったことも珍しくありません。半年以内に売却できない場合でも、過度な焦りは禁物です。
半年間で売れない場合は、継続的に価格調整を行い、売れるまで金額を下げていく必要があります。価格調整にはスピードも大切ですが、単なる安売りを推奨しているわけではありません。その地域と市場をしっかりと調査し、その時に売れるギリギリの価格で売却を進めることで、売主様の利益を最大限確保することを目指しましょう。
ベッドタウンの分譲時期はバブル期であったため、現在の売却相場が購入時と比べて大幅に低くなっていることにショックを受ける売主様も少なくありません。しかし、「今が安い」と感じても、将来振り返った時に「あの時売っておいてよかった」と思えるような金額を目指すことが大切です。
3. 積極的な他社への物件紹介と広告掲載承諾を行う
不動産を売却する際、どの不動産会社を選ぶかは非常に重要です。その中でも、他社への物件紹介の積極性と広告掲載への承諾は、特に着目すべきポイントだと「売却コンシェルジュ」のブログや動画でも繰り返しお伝えしています。
レインズによる情報共有と他社連携の重要性
不動産会社に物件の売却を依頼すると、その会社は国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営する「レインズ」と呼ばれる、不動産会社専用の物件情報システムにあなたの物件を登録します。このレインズに登録されると、全国のすべての不動産会社があなたの物件情報を閲覧できるようになります。
そして、あなたの物件に興味を持った顧客を抱える他の不動産会社から、「まだ物件はありますか」「詳細資料をいただけますか」「お客様にご紹介する際に注意すべき点はありますか」といった問い合わせが、あなたが依頼した不動産会社に入ります。この時、売主側の不動産会社が、他の不動産会社に対してどれだけ積極的かつ丁寧に物件を紹介できるかが、重要になるのです。
残念ながら、中には他社からの問い合わせに対し、態度が悪かったり、面倒くさそうに対応したりする不動産会社も少なくありません。(このような会社の担当者も、売主であるあなたの前では紳士的です。)しかし、買主側のお客様を持つ不動産会社からすれば、自社の大切な顧客にそんな対応をする会社が扱っている物件を紹介すること自体をためらってしまいます。物件がよほど魅力的であればそれでも紹介される可能性はありますが、郊外のベッドタウンなど、同じような物件が多く競合が多い地域では、他社の顧客を競合物件に奪われてしまうことにも繋がりかねません。
だからこそ、他社への物件紹介をきちんと行い、普段から丁寧で誠実な対応をする不動産会社を選ぶことが肝心です。
広告掲載承諾で露出を最大化する
さらに重要なのが「広告掲載承諾」です。
通常、売却を依頼した不動産会社は、自社でSUUMOやHOME’S、アットホームなどの大手ポータルサイトや自社ホームページにあなたの物件を掲載します。それとは別に、レインズを通じて他の不動産会社があなたの物件を自社のHPやポータルサイトに掲載したいと申し出てくることがあります。この広告掲載を許可すると、あなたの物件は依頼した不動産会社が提携しているポータルサイトだけでなく、他の不動産会社が提携しているポータルサイトやHPにも掲載されることになります。
これにより、インターネット上での広告量が大幅に増え、より多くのお客様の目に触れる機会が増えます。適切な価格設定と相まって、物件が売り出されてから早期に具体的な問い合わせに繋がりやすくなるでしょう。
他社による広告掲載を断る不動産会社もいるようですが、不動産売却に強い会社は、むしろ積極的にこの広告掲載承諾を活用し、物件の早期売却を目指します。
まとめ:今すぐできる準備を始めましょう
今回お伝えしてきたように、郊外のベッドタウンにある不動産の価値は、地域差こそあれ、徐々に下落していく傾向にあります。そのため、今が最も高い相場であると私は考えています。
もし、そういった地域に空き家をお持ちであれば、経済的な合理性だけで言えば、1秒でも早く売却を開始することを「売却コンシェルジュ」として強くおすすめします。
とはいえ、不動産の売却には、仏壇の整理や遺品の片付け、相続に関する問題(権利の確定や相続登記など)といった様々なご事情が絡むことが多々あります。そうした状況の中で、なかなか売却に踏み切れないお客様からのご相談も、これまで数多く受けてきました。
もし今すぐに売却を進めるのが難しいと感じていらっしゃるなら、まずは「いつでも売却できる準備をしておく」ことが非常に重要です。例えば、まだ家が片付いていないのであれば、少しずつでも片付けを始めたり、売却できる状態にするための計画を立てたりするだけでも構いません。焦らず、でも着実に、いつでも処分できる状況を整えておくことが大切です。
相続に関しては、もしかしたら少し言いづらいかもしれませんが、親御さんがご健在であれば、相続後に兄弟間で揉めることがないよう、遺言書を残してほしいとお願いするのも良い方法です。親御さんの明確なご意向があれば、お子さんもその言葉に耳を傾けやすいものです。
いずれにしても、いざ売却しようと思った時にスムーズに進められるよう、今から準備を始めることが、郊外ベッドタウンの不動産においては第一歩となります。そして、実際に売却する際には、今回お伝えした注意点などもぜひ考慮に入れ、売却の検討を進めてみてください。
「高く売れます」「早く売れます」といった耳障りの良い話ばかりできず恐縮ですが、これらは私が実務で日々直面し、時には苦悩しながら向き合っている現実です。皆さんの不動産売却を考える上で、少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
売却コンシェルジュでは、不動産売却に関するご相談を幅広く受け付けております。相談は無料ですので、ご自身の不動産がどのような状況にあるのか知りたい方も、ぜひお気軽にご連絡ください。どんなに難しい案件でも、売主様に寄り添い、売却コンシェルジュが一歩一歩、不動産売却の成功を目指します。
皆様、一緒に不動産売却を成功させましょう!
この記事を書いた人

- 山﨑 紘靖
- 過去に200件以上の不動産売却に携わり、 某大手不動産会社で営業成績No,1だった山崎が、 売却の専門家として、あなたの「最高額で売れた」をサポートします。
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